第65章 深い事情

ここまで聞いて、南坂海乃の胸は針でちくりと刺されたように痛んだ。

平井教授が一瞬ためらうのを見て、それでも彼女は本題を切り出す。

「先生……実は今回戻ってきたのは、兄ちゃんのことを少し聞きたくて」

「ほう? どんなことだ」

「当時、兄ちゃんに特別仲の良い友達っていましたか? それか、兄ちゃんがよく名前を出してたのに、私の知らない人とか……」

言い終えると、南坂海乃は先生の目をまっすぐ見つめた。焦りを隠せない声がこぼれる。

「特に……兄ちゃんが事故に遭った頃、近くにいた人です」

いまも彼女の頭から離れない。太田咲雪以外にも、兄ちゃんのそばには何か――別の事情があったんじゃないか、...

ログインして続きを読む